外国人を取り巻く環境変化

環境変化

外国人の入国制限が次の3段階で徐々に緩和されてくる。2020年9月

コロナ禍の終息がなかなか見通せない中、出入国制限が徐々に緩和される動きが出てきました。次の3段階で検討されています。
1.ビジネス往来:ベトナムやシンガポール等感染状況が落ち着いている国に限定して入国再開の見通し。10月から拡大される。
2.中長期資格者:現在は永住者や一部の教員、医療関係者に限り容認されているが、10月から1日1000人を上限に制限が緩和される。PCR検査陰性が証明され、行動計画を提出し、公共交通機関を使わないことを条件に入国後2週間の待機措置が免除される。
3.短期滞在:現在も原則禁止。解除時期は未定。

防災・医療現場で「やさしい日本語」を使う動きが広がっている。2020年9月

1995年の阪神淡路大震災において、日本人が使う言葉が十分に理解できず、必要な情報が得られない外国人が多かったことを教訓に、「やさしい日本語」を活用する動きが広がっています。
 特に防災や医療の現場で安全や健康に関わる緊急な情報を簡単な表現を使って外国人に確実に伝えるのが狙いです。台風/地震時の避難所やコロナ検査をする医療機関などで活用しています。
 例えば次のような表現です。「避難所」➡にげるところ、「暴風」➡風が強くなる、「満潮時の高波に注意して下さい」➡海の水が増えることに十分に気をつけてください、「体温を測定します」➡熱を調べます、「結果は後日電話でお知らせします」➡あす結果がでます。電話します。

「特定技能」資格の現状 2020年10月

昨年4月に新たに加わった在留資格「特定技能」、介護や外食など14業種の比較的単純労働を対象に深刻な人手不足を補う目的で発足しました。
 賃金が日本人同等と以上/転職が可能/在留期間が5年間に伸びるなど技能実習制度に比べて魅力的な資格ということですが、伸び悩んでいます。今年4月までの1年間で約5万人を目標にしていたところ、2月中旬で3千人にも満たず、4月末で5千人弱、6月末になっても6千人止まり。
 コロナ禍の影響もあるでしょうが、日本語能力に加えて業種ごとの特定技能評価試験のハードルが高く、また現地の送出機関の整備も遅れているようです。
 また、受け入れ側の日本企業にとっても、仕事面だけでなく、公的手続き、住居確保、生活に必要な契約など日本で不自由なく生活できるように支援するよう義務付けられているため、その分の時間と経費が重荷になってきます。
 ちなみに現在6千人の特定技能者のうち、大多数は技能実習2号から資格変更した者です。この方たちは試験が免除され、かつ一定期間日本に暮らしていたので企業側が負荷する生活支援も少なくて済みます。
 コロナ禍が落ち着くにつれて人手不足の問題が深刻化していきそうですが、特定技能制度を軌道に乗せるための新たな施策や制度が今後どのように見直されるか注目です。

「特定技能合格者 ようやく来日」10月24日
アジア6か国で特定技能評価試験が実施されていますが、新型コロナの影響で現在約8千人弱の合格者が入国を足止めされています。内訳は、業種別に介護4千人弱、飲食料品製造2千人弱、農業1千人弱、外食1千人弱。国別ではフィリピンとインドネシアが多く、それぞれ3千人前後。
 ただ、今月に入ってようやくカンボジアから介護分野の合格者が来日し、今後のコロナ禍を見極めながら徐々に増えていくことが期待されます。
 特定技能資格は、技能実習制度にはないメリット(就労期間が5年と長く働くことができ、転職が可能、日本人と同等以上の報酬が得られる)があるため、試験に合格した外国人は大いに期待しているでしょうし、労働力不足を解消したい企業側にも意欲のある外国人を受け入れるメリットは大きいのではないでしょうか。

外国人職場環境改善の動き 2020年11月

 2019年に労働基準監督署が外国人労働環境を調査した結果、技能実習生が在籍する7割超の受入事業所で、労働時間超過、安全基準遵守違反、割増賃金不払い等の労働基準関係法令違反が認められました。「日本はビジネス上の人権侵害が横行している」という海外からの批判が今でも続いている中で、大企業を中心に企業イメージが低下し経営悪化につながらないよう、職場環境を調査・改善する動きが出てきています。例えば、A社では人権団体ASSCが運用するスマートフォンアプリを社内に掲示して働く外国人の生の声を直接人権団体に伝える仕組みを取り入れたり、B社では国内外の外国人雇用の実態調査を踏まえて人権に関する勉強会を開いたりしています。また、国際協力機構JICAにおいても「責任ある外国人労働者受入プラットフォーム」を設立して快適に働くための情報を提供し、また実態調査を踏まえて改善策を提案する等の活動を始めています。
 技能実習生は日本で学んだ技術を母国途上国に移転して発展に寄与する役割がありますが、多くは受入事業所側が安価な労働力を確保する手段として活用しているのが実態と言われています。技能実習生はその多くが母国の送り出し機関に多額の借金をして日本にやって来ており、その返済を終え豊かな生活を迎えるためには劣悪な労働環境でも我慢して働かざるを得ない苦しい立場ではないでしょうか。
 新たに加わった特定技能は、その反省を踏まえて、母国政府と協力覚書を交わして仲介する業者から悪質なブローカーを排除するとともに、受入事業所側に対しても職場環境から生活面まで幅広く支援する計画を作成し実施報告を義務付けることにより、外国人が安心して働ける仕組みを取り入れています。
 コロナ禍が収束してくれば当初の35万人受入れ計画に向けて動き出すことになります。特定技能制度が外国人と受入事業所の双方でWIW-WINの関係を構築し、共生社会が進化していく動きに注目したいと思います。

就労条件の緩和について 2020年12月

 先月群馬県で起きた家畜窃盗事件はたいへんショッキングなニュースでしたが、在留カード偽造に手を染める事件など、外国人トラブルが増えています。コロナ禍の影響で職を失った外国人が安定した生活を送れなくなっていることが主な背景にあり、犯罪を未然に防止する対策が急務です。
 そのような中、在留資格ごとに厳格に定められている就労条件を緩和し、働く能力や意欲のある外国人がもっと柔軟に働ける環境整備が進められています。例えば技能実習生については転職できない決まりになっていますが、観光業や運輸業に従事しやむなく解雇された場合、人材難で苦しむ農業や漁業などの別の業種へ転職できる特例(4月以降)が設けられています。また、帰国できない短期滞在者についても原則として就労できませんが、資格外活動許可を得てアルバイトをすることが認められています。
 ただ、政府がこのような緩和策を打ったとしても日本語能力が不十分な外国人に伝わらなければ意味がありません。外国人に関わる日本人には情報を積極的に発信して彼らを支援していく責任がありますし、困窮している外国人の方から気軽に相談でき、かつ正しく理解できる体制ができていることも重要です。

2021年に注目したい点は? 2021年1月

 今年は、外国人を「生活者」と捉えて受入れる社会を実現させるために、「外国人に寄り添った受入れ環境」をどのように備えていくのかという点に注目したいと思います。
 その背景ですが、2年前に「特定技能」という在留資格を追加して現業の労働力不足を外国人で補うという新たな受入政策がスタートしました。計画通りの受け入れが実現すれば、技能実習生と合わせた現業の労働者は在留する外国人全体の25%超(約73万人)になると見込まれています。政府は「外国人材受入れ・共生のための総合的対応策」という青写真を示しており、今後は新たな受入れに対応した多面的な環境を具体的に整備していくことになります。
 技能実習生でお分かりの通り、現業に携わる外国人の多くは、他の就労資格(技術・人文知識・国際業務や高度専門職など)に比べて日本語や日本の生活に慣れていません。そのため、職場では生活指導員や支援実施者が責任をもって支援する義務が課され、生活の場面でも地方自治体等で適宜適切な支援体制を充実させる動きが進行しています。しかし、「技能実習生に対する長時間労働や人権侵害、雇止めや解雇で生活が困窮」といった問題がしばしば起きている現状において、特定技能等の現業就労を順調に軌道に乗せていくためには彼らを支援する体制をさらに充実させることが不可欠です。
 「外国人に寄り添った受入れ環境」を整えるには、青写真や仕組みを構築した後、現場の様々な場面で活躍できる「人」を適材適所に揃えることこそ重要で難しい部分です。PDCAを回しつつ環境を整えていく過程に注目していきたいと思います。

働き方改革について 2021年2月

 日本人の人口が減少傾向に転じて7年ほどが経ちました。少子化は2050年になっても止まらず就労人口も減り続けると予測されています。総務省の統計によると、2020年現在の総人口は約1億2千万人から2050年には約9千5百万人へ、生産年齢人口も約8千5百万人から約5千万人に減少することになります。当然のことながら、このままでは今の経済規模は維持できず縮小という状況に陥ってしまうため、政府としては「働き方改革」という施策を掲げて何とか歯止めをかけようとしています。
 具体的には、①IT/AIといったシステムを導入して一人当たりの生産性を高める、②高齢者や女性が働きやすいように就業環境を整えて働き手を増やす、③外国人が日本で働ける就労資格を増やして労働力不足を補う、といった改革が打ち出されています。
 「コロナ禍が終息して経済活動が復活してきたら人手不足で慌てることになりそうだな」と感じているとしたら、①②③の成功体験に目を向け、チャレンジできそうな新たな仕組みを検討してみるなど、就労人口が減っていくという現実に目を背けず、身近な問題として捉えて行動に繋げて行くことが重要になってきます。
 とは言っても、今までバリバリの正社員中心で会社を築き上げてきた企業が、これらの対策を受け入れて改革を進めるにはハードルが高いと感じるのが現実ではないでしょうか。例えば、プライベートより会社生活優先、人間関係重視、アナログ思考、阿吽の呼吸、高度成長時代の成功体験、男性社会など、今の時代には受け入れ難い体質が残っていればなおさらでしょう。
 ただ、企業の経営者として、「今までうまくやってきたから変えなくても何とかなる」と高を括っているとしたら、「ゆでガエル」になりかねません。少子化の危機感を自分に降りかかってくる火の粉として真剣に捉えることができるかどうかが新たな行動へのカギになりそうです。

入管手続きのデジタル化 2021年3月

 「在留資格を更新したり変更したりするのに申請書を持ってわざわざ入管まで足を運ぶのはめんどう」と感じている方は多いのではないでしょうか。特に年度末は留学から就労への変更申請が集中するなど、入管窓口が相当混雑して何時間も待たされる時期です。
 そんな中、申請者本人がパソコンやスマホからオンライン申請ができるようにする計画が進められています。実施時期はまだ確定していませんが、4月以降の近い将来になりそうです。(現在は、外国人が所属する企業や団体の職員のみが代理でオンライン申請することができます。)
 ただし、気を付けなければならないのは、オンライン申請によって便利になるとは言っても、なりすまし等の偽装申請を見逃さないように本人確認の手続きを厳しくして、厳格な資料をいくつも要求されることがあるかもしれません。申請不備のために差戻されて手間取ることがないように申請の要領を十分に確認して準備を進めなければなりません。
 オンライン申請に慣れるまでは行政書士等の専門家のサポートがあれば安心でしょう。

難民認定が話題になっている 2021年4月

 入国管理局に外国人の収容施設があるのをご存じでしょうか。退去強制となった不法滞在者や難民認定を申請中の外国人を収容する施設です。そこでは保護されるというより監禁に近い扱いを受けるらしく、国際的に問題視されているようが、そもそも日本は難民を認めるための要件が厳しく、認定率が1%にも満たない状況です。ただ、認定が不許可になっても申請を繰り返し、強制送還を免れるため、結果として収容期間が長期化していることも話題になっています。
 ちなみに、難民と認めてもらうためには、申請者が「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること」、かつ「国籍国から直接日本に逃れてきた者であること」、かつ「国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないこと」という厳格な要件を満たさなければなりません。
 難民認定が厳しく収容が長期化するという問題に対して、政府は今年の2月に入管法改正を決定しました。主な改正点は、①逃亡等の恐れがなければ、家族や支援者の監理下におかれることを条件に施設外で生活できること、②国籍国の紛争から逃れてきた場合でも難民認定の要件に加えること、③仮に強制送還となっても「在留特別許可」を本人自ら申請できるようにする、④難民申請は2回までとし、それ以降は強制送還とする、というものです。
 このような状況下、行政書士はどのような役割が期待されるのでしょうか。先ずは、許可/不許可の行政処分を初回の申請で確定できるよう申請手続をバックアップすることが考えられます。難民の要件を証明するための資料をできるだけ集めて、本人の事情を申請書に正確に反映するという役割です。そして、万が一不許可とされたときは、特別の研修を修了した行政書士が代理して行政不服審査法に基づく不服申立てを行い、入管庁担当者に口頭で意見を述べる場面に立ち会うことも可能です。ただし、最初の申請手続において行政書士が関与していなければならず、関与なく申請者本人が単独で行った場合は不服申立てを支援することはできません。

中長期在留資格の内訳から見る課題  2021年5月

 今後も豊かな生活を継続し高めていくためには、少子高齢化/労働力不足の問題を避けては通れず、政府は「働き方改革」という基本方針を立てて何とか乗り切ろうとしています。
 外国人が日本で働ける機会を増やすという施策も「働き方改革」一つで、2年前に特定技能の在留資格を新設して単純労働を担う外国人にも在留の門戸が開かれました。
 直近の報道によると、特定技能の外国人は今年2月の時点で昨年同期比の7倍に増え、2万人超に達したようです。新設当初34万人の受入れ計画には未だ程遠いものの、特に建設や介護などの分野では人手不足が深刻なので、コロナ禍が終息すれば、海外からの人流が加速すると見られています。
 また、日本に住む中長期在留外国人ですが、欧米各国で話題になる移民とは異なる存在なのでしょうか。移民の定義は「永住を意図して他国から移り住んだ人」ということですので、在留資格で言えば、永住者/特別永住者/日本人の配偶者等/定住者が該当しそうです。統計調査によると、今の中長期在留外国人のうち5割超はこれら在留資格であって、日本人の約1%、100人に1人が移民ということになります。入管管理上、入国審査時には永住権を取得することはできませんが、日本に長く暮らしその後永住を意図する外国人は相当数いるということになります。
 入管管理上の基本方針は「移民政策はとらない」、「単純労働者は積極的には受け入れない」ということになっていますが、日本に住む外国人の約半数が移民であり、かつこれから単純労働者も増えていくという状況にあっては、今の実態と将来ビジョンに沿った方針への見直しが課題になりそうです。
 特に、日本語や日本文化に慣れていない単純労働者が増えていくことのマイナス面が懸念されます。すでに日本各地で問題が燻っているようですが、彼ら外国人が日本に馴染めず、また日本人と対等に扱ってもらえないために社会的に孤立し、失業・貧困に陥りかねません。生活保護の負担が増え犯罪が増加するといった社会問題となって彼らを排除する動きにつながってしまいます。
 このような事態を招く前に、関係する民間企業や団体および外国人本人の自助努力に頼るのではなく、政府主導のもとで強力な教育支援体制が求められます。
 例えば、日本語講座や日本文化を学ぶ市民教育を充実させて定期的に理解度評価を義務付けること。日本語や日本の習慣に深く関わり日本人とのコミュニケーション力が高まることによって、日本で成長したいという期待と自ら行動する積極性が芽生え、地域社会からの孤立を防ぎ、共生する社会につながっていくのではないでしょうか。
 外国人を取り巻く環境の動きを注視し、行政書士として外国人との共生社会づくりの一翼を担って行けるよう積極的な活動を心掛けたいと思います。

梅雨の季節がやってきました 2021年6月

 雨には、いろいろな表現があることをご存じでしょう。この時期は「梅雨(つゆ)」や「五月雨(さみだれ)」、降り方で言えば「小雨(こさめ)」、「小糠雨(こぬかあめ)」、「天気雨(てんきあめ)」、「長雨(ながあめ)」、「通り雨(とおりあめ)」と来て、「豪雨(ごうう)」、「ゲリラ豪雨」、最近話題の「線状降水帯(せんじょうこうすいたい)」という災害につながる言葉も加わりました。
 この雨の一例からもわかる通り、日本人には個々の違いを感じて繊細に表現する豊かな感性が備わっていると思います。
 さて、相手を思いやる気持ちを「遣らずの雨(やらずのあめ)」という言葉で表現することがあります。例えば次のような場面です。ある時Aさんのところに友人のBさんが訪ねてきました。用事が済んだのでBさんが帰ろうとしたとき、突然雨が降り出しました。するとAさんは「遣らずの雨ですね」とBさんに言いました。AさんはBさんに「もっと長く居てほしい、友人が帰るのが寂しい」という気持ちを「遣らずの雨」つまり「帰ろうとする人を引き留めるかのように雨が降ってきたよ。」と伝えています。
 このように、相手を思いやる文化を持っていることを私たち日本人は誇らしく思いますし、外国人にも伝わるのであれば、日本への関心が深まり、これからもっと日本で豊かに暮らしていきたいと思ってもらえるのではないでしょうか。
 今夏開催予定のオリンピック・パラリンピックですが、「おもてなし」がキーワードの一つになっています。「おもてなし」とは損得勘定なく相手を気遣うやさしい気持ちで接すること、「おもてなし」の心を世界中の人々に直接アピールできる絶好の機会ですが、残念ながらコロナ禍が邪魔をしています。
 でも、その心は日本人が昔からずっと持ち続けてきたものであって、相手を気遣うやさしい気持ちで接することは、外国人との共生社会を発展させる上で大きな力になるものと確信しています。

会社に求められる働き方 2021年7月

日本の伝統的な雇用形態は「メンバーシップ型(就社)」と言われています。①新卒者を定期に一括採用した後、②年功序列的に昇進し、③定年まで終身雇用するといった特徴があります。新卒者は将来を担う有望な人材として、手取り足取り先輩社員から指導を受け会社内で強い信頼関係が築かれていきます。会社で身を粉にして働き出世することに生き甲斐を求め、定年まで会社に忠誠心を尽くすという働き方がその典型です。ただし、任される仕事は必ずしも本人の希望に沿ったものとは限らず、会社都合で強制的にやらされることが多いのも事実です。どちらかというと会社の方が個々の従業員よりも強い立場となるため、個々の従業員は会社優先を強いられ、働く場所も指定され、時には残業等でプライベートを犠牲にすることもしばしばです。
 一方、海外の雇用形態は「ジョブ型(就職)」が主流です。日本でも平成から令和にかけて浸透してきましたので、若い世代にはこちらの方がポピュラーかもしれません。少なくとも仕事内容は入社前に明確に示され、その内容を合意した上で働くことになります。①必要な時期に不定期に採用し、②勤続年数に関係なく成果主義により昇進する一方で、③キャリアアップを目指して中途転職するという特徴があります。
 「メンバーシップ型(就社)」と「ジョブ型(就職)」を比べてみると、両方にメリット・デメリットがありますが、例えば、業務スキルが定まっていない文系の新卒者にとっては、「メンバーシップ型(就社)」の方がメリットは大きいかもしれません。ただし、経験を重ねスキルが身についてくると、会社に縛られるのではなく勤務地やキャリア形成などを自分で選択し、ライフワークバランスを充実させたいと思ったら「ジョブ型(就職)」の方が好まれそうです。
 ワークライフバランスが充実しキャリアアップを自分の意思で目指せる働き方を、日本の会社で活躍したいと考えている外国人の多くが望んでいるとすれば、会社としては出来るところから「ジョブ型(就職)」での働き方を取り入れていく必要がありそうです。優秀な人材が長期間働く意欲を保てるよう、会社都合を強制する前に、外国人の意思を尊重して自立を支援するという姿勢を示すなど、会社と外国人との関係をフラットにしていく姿勢が求められるかもしれません。

技能実習で「思いやりの心」 2021年8月

 技能実習制度の歴史:技能実習制度は、1990年代前半、国際貢献のため開発途上地域の人材育成を通じて技術等を移転するという目的で始まりました。それ以前も外国人を低賃金で雇いたいという企業側(使)の要望と、日本で稼いで生活を豊かにしたいという外国人(労)のニーズがあって「研修」という在留資格で受入れていたが、劣悪な労働条件で働かせるという実態から失踪事件に発展するケースが問題となっていました。各国からは強制労働、人権侵害などと非難されたため、2017年になって技能実習制度の適正な実施と技能実習生の保護を目的に技能実習法を制定して、特に企業側を厳格に管理する体制が整えられました。
 失踪に歯止めが掛からない現状:統計情報によると、2020年末現在、技能実習生は約38万人に増え、うち約9千人(2%)がなお失踪事件を起こしています。技能実習法に従い、認可法人(機構)により失踪の実態を調査し、指導・監査・改善命令、従わなかった場合には罰則という厳しい監理体制を敷いていますが、機構の対応が追い付いていない実態がネットや新聞報道上で話題になっています。
 なぜ失踪してしまうのか:根本原因として考えられるのは、外国人と受入れ企業側がそれぞれ抱く期待が、現実とかけ離れていることに不満と不安を感じているにもかかわらず、その感情を放置し、あるいは不満と不安を解決する対策が不十分なままやり過ごした結末ではないかと思われます。
 行政書士としてできること:そもそも仕事をするということは、(労使)が連携して同じ目標に向かって世の中に役立つ何かを提供するということ。(労使)がWIWWINの関係になければ仕事がうまくいくはずはありません。(労使)がうまく連携するためには、企業側は「思いやりの心」を持って外国人に接し、外国人もまた「思いやりの心」で企業側の仕事に携わるべきことを認識し、お互いの期待や感情を相手に上手に伝え理解してもらえる機会を持てるかどうかにかかってきます。行政書士としては、日々の現場にアンテナを張って、今までの失敗例や成功例から学んだ未然の防止策を提案し、具体的行動・改善に繋げるサポートをしていかなければなりません。

日本は外国人労働者からフラれる? 2021年9月

 コロナ禍の影響で外国人労働者が希望通りに来日しにくい状況が続いています。そんな中、将来的に日本は外国人労働者から選ばれなくなるのではと話題になっています。
 下の表は、アジア各国の「一人当たりの名目GDP」が過去10年間でどのように推移したのかをまとめたものです。単位はUSドルです。改めて驚きますが、この中で日本だけが停滞し、他国の経済は順調に伸びています。国際移動転換という理論によれば、自国のGDPが7000ドルを超えると、新興国から先進国への移動は減ってくると考えられています。中国からの技能実習生の例を見ると、その数は2011年から2014年頃は横ばいで推移し、2015年以降は減少に転じました。中国の一人当たりのGDPは確かに2013年に7000ドルを超え、その後も急成長を遂げています。ベトナム、フィリピン、インドネシアからも技能実習生を数多く受け入れていますが、何年か先には中国同様に減少するかもしれません。

2011年2016年2021年2021年/2011年2021年/2016年過去10年間の傾向技能実習生の割合技能実習生(2017年/2013年)
シンガポール53,98156,84764,103 119%113%  上昇
日本48,76139,41142,928 88%109%ほぼ横ばい
韓国25,10029,27434,866139%119%  上昇
台湾20,83923,07132,123154%139%  上昇
中国 5,561 8,11911,819213%146% 急上昇17% 75%
マレーシア10,397 9,52311,604112%122%  上昇
タイ 5,494 5,995 7,702140%128%  上昇
インドネシア 3,689 3,606 4,256115%118%  上昇 9%200%
ベトナム 1,950 2,720 3,609185%133%  上昇55%480%
フィリピン 2,473 3,108 3,646147%117%  上昇 8%250%
ネパール 804 900 1,236154%137%  上昇

 また、移民受入れに消極的な日本の政策は、外国人労働者から選ばれなくなる危険要因です。技能実習生の失踪問題が後を絶たず、難民に対する厳しい対応を続け、名古屋入管施設で起きた悲しい事件などが起きるなど、外国人に厳しく、安全に安心して暮らせない日本社会のイメージが払しょくされない限り、シンガポールや韓国、台湾、さらには中国などの国々に流れてしまうことは容易に想像できます。
 将来の経済を発展させる上でグローバル人材を育成し確保していくことがますます重要になると分かっていても、日本人だけで何とか解決できるのでしょうか。(少なくとも今の政府はそのように考えているようです。)移民政策に積極的な欧米各国の良い面に倣って、外国人を積極的に受け入れ共生していく施策を打ち出していった方が効果的・効率的な経済発展に結びつけられるように思えますが、いかがでしょうか?

外国人の子供に厳しい日本語教育 2021年10月

 子供たちが夢と希望に向かって無我夢中にチャレンジしている姿を見ると、つい応援したくなってしまいますね。外国人の子供も全く同じことでしょう。
 しかし、残念ながら外国人の子供たちにとって、日本語教育を受ける現実は厳しいと言わざるを得ません。大人になったら夢と希望を実現できる仕事に就きたいと思っても、例えば、日本の高校を卒業した外国人には一般の大学を受験することが認められていませんし、仮に受験できたとしても、そもそも難解な文章の読解力を問う国語の高い壁に阻まれ、国語以外の能力が優れていても大学進学の夢が閉ざされてしまいます。
 子供たちは新たな環境に順応し物事を吸収する力が優れていますので、幼児、児童、生徒の頃から日本語教育を十分に受ける機会があれば、日本人と同じレベルに到達することができるはずです。しかし、これも残念ながら、指導教員が足りない、財源に限りがあるなどの理由で十分な教育が受けらない状況が続いています。今の日本には、高度な教育を受ければ伸びる潜在能力の高い外国人の子供たちがたくさんいるはずです。学びの機会を充実させることにより、将来企業や社会の中枢でグローバルに活躍できる貴重な戦力となってくれるに違いありません。
 政府は2018年12月に「外国人材の受入れ・共生のための総合的対策」という中長期ビジョンを立てました。その中で「生活者としての外国人に対する日本語教育の充実」、「地域における日本語教育環境を強化するための総合的な体制整備」、「外国人児童生徒の就学機会の適切な確保等、就学状況把握、就学促進の好事例の普及、日本語指導等きめ細やかな指導を行う自治体の支援」という課題を浮き彫りにしています。
 それからまもなく3年、未だに具体的な工程表がはっきりしてしませんが、どのように具体化していくのか今後の動きに注目し、行政書士として支援できることを模索していきたいと思います。

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